今回は世界で100万部の大ベストセラー『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』について紹介します。
この本が伝えたいことは「事実(データ)に基づいて世界を正しく見よう」です。人にはドラマチックな物語を求める本能があり、その本能のせいで、ものの見方を間違えてしまったり、勘違いしてしまいます。本書では、データに基づいて世界を見ることでそのような本能に打ち勝つ「ファクトフルネス」という習慣を身に付ける方法が紹介されています。
これまでのようなスタイルですと、本書の内容を全て話してしまうことになりそうなので、今回は簡単な説明と、私なりのデータの見方や注意点などを解説して、みなさんのデータの見方のお手伝いをしたいと思います。
おすすめポイント
- 世界の見方が変わり視野が広がる
- 論理的に考える習慣が身に付く
- 今まできづかなかったビジネスチャンスに気づく
こんな人におすすめ
- 未来が不安な人
- マーケティングなどに関わる社会人
- ネガティブ思考な人
ドラマチックな物語を求める本能の例として本書では
- 貧困や飢餓に苦しむ人は増え続けている
- 貧富の差は広がり続けている
- 災害で亡くなる人は増え続けている
というようなものが挙げられています。皆さんもこのように思っていませんか?これらは全て誤りです。貧困に苦しむ人の数は過去20年で半分以下になっていますし、貧富の差は小さくなっています。災害で亡くなる人も過去100年で半分以下になっています。
このように、ドラマチックな物語を求める本能は、事実と異なる認識をさせてしまいます。そして、マスコミはこの本能を利用して、人を惹きつけるような番組を作るため、より誤った認識をしてしまいがちです。しかし、これはマスコミが悪いわけではありません。マスコミは人を惹きつけるような面白い番組を作るのが仕事ですし、もしマスコミが「今日も国内便全てが無事着陸しました」というような報道をしたとしても誰も興味を持ちません。
そのため、マスコミを批判するのではなく、情報を受け取る我々が正しいものの見方を身に付けなければなりません。本書には人間が持つドラマチックな物語を求める10個の本能に打ち勝ち、正しく世界を見る習慣の身に付け方が書かれています。
この本では、数字を比較したり、一人当たりの数字を出すなど、数字に基づいて世界を見ようということを推しています。これらは非常に大切なことですが、これには注意が必要です。見方を間違えると数字は平気で嘘をつくからです。例を挙げます。
子どもの学力と朝食の関係を調べるために、中学生の数学のテストの平均点を、朝食を食べるグループと食べないグループに分けて比較しました。その結果、朝食を食べるグループの平均点は80点、朝食を食べないグループの平均点は70点となりました(下図)。
※平均点などの数字および、グラフは私が説明のために適当に作ったものであり、事実とは異なります。また、今回はデータの解釈の仕方について説明するためのモデルとしてこの例を出しましたが、実際に朝食と学力の関係について言及しているわけではありません。
この結果から、朝食を食べると頭が働きやすくなり、学力が向上するという結論を導きました。
このような説明は、一見すると正しいような気がします。朝食を食べたグループの方がテストの点数が高くなると数字をみれば明らかです。
しかし、この調査には落とし穴があります。この調査では、「朝食を食べたグループの平均点の方が高かった」という事実しか言えません。朝食を食べることで本当に頭が働いてテストの点数が良くなるのかについては、この調査だけでは言えないのです。
朝食を食べさせてくれるような家庭環境だから、塾に行く子や家庭学習をする子が多く、平均点が高い可能性があります。
朝食を食べさせてもらえない家庭環境だから、塾に行く子が少ないため、平均点が低い可能性があります。
このように他の要因が絡んでいる可能性があるため、単純に数字を比較するだけでは、事実とは異なる解釈をしてしまう可能性があります。
もし、朝食を食べることで脳が働きやすくなり、学力が向上するということを示したいなら、このように単純にテストの点数を比較するのではなく、脳の働きを実際に観測し比較できるような実験系を確立し、朝食の有無で脳の働きがどれくらい違うのかを比較するのが適切です。
このような数字のトリックは世の中にあふれています。詐欺師はこのような数字のトリックを活用して、データを自分の都合の良いように説明して人々を騙していきます。
そのため、私としては数字に基づいて世界を見ることはもちろん大切ですが、数字を鵜呑みにせず、数字の裏にある本当の意味を考え、本質を見抜けるようになることが大切だと思います。
数字の裏の意味を見抜く方法としては、調査方法は適切なのか?ほかに影響を与える因子はないか?データの解釈は適切なのか?論理は飛躍していないか?などに着目すると、データを正しく見ることができると思います。目の前のもっともらしい数字に飛びつかないことが大切ですね。自分に有利そうなデータを見つけるとつい飛びつきたくなるので、私も気を付けたいと思います。
この本を読めば、ドラマチックな本能に打ち勝ち、事実(データ)を基に世界を正しく見る習慣を身に付けることができます。その習慣を身に付ければ、今まで見逃していたビジネスチャンスを見つけることができますし、世界が少しずつ良くなっていることを感じることができます。
先ほど解説したデータの見方と併せれば、かなり正しく世の中の実態を知ることできるようになると思います。この本を読んで本質を見抜く習慣「ファクトフルネス」を身に付けましょう。今回は以上です。